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2ちゃんねる@ネトゲ実況のスレッドの「炎蛇将ガダラルを愛でるスレ」で使われた炎蛇将ガダラルのAAを愛でつつ保管するブログです                          *ただ今移転作業中* スレ11~13までの保管が完了しています。
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21 名前:既にその名前は使われています :2007/06/26(火) 16:17:38.25 ID:Q/CKDWa2
" ; ;ヾ *;""#ヾ*;ヾ;i"i "; *
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゛*|l!|| ll|ソ./i;^*.
  l;l!ll |l|    `  `     ゛
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  |ill|| ll|   .曰    ` .,,;;;;;;;;;;;;;;;;;,,
,, l|il|l l!|   .| |  `  .(;;_;;_;;;;_;;_;;;;_;;)    `  ゛ 
,, .,|::l|| !!|,,,,,,ノ__ヽ,,,,,,,,,,,,,,レ|リ`・д・|リ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,`   
";:ノ;;;i!! !!ヽ ||梅||  ,,   (つ[_]と)   ,,       ,,
    ,,  ||酒||   ,,   (⌒)(⌒)     ,,
  ,, ,,  ゙゙゙゙"""  ,   ゙゙゙゙"""゙゙゙"""  ,,

14 名前:1 :2007/06/26(火) 15:25:43.35 ID:oQtTvLM8
「炎蛇将殿」
 振り返ると、自分と何処か似た、けれど自分より人の良さそうな顔があった。
「ご注文の品をお届けに」
 アルザビの競売を管理するこの男は、注文した品を職員任せにせず、律儀に届けに来る。
 一抱えもある木箱を多少重そうに抱えていた。
「ああ。確かに。いつも迅速だなジナバナ」
 ずしりとした箱が受け渡された。差し出された伝票に簡単にサインをする。
 箱からは瑞々しく甘酸っぱい香りが微かに漏れていた。
「またこの季節になりましたか」
 ジナバナが何処か楽しそうに箱を見つめている。
「……心配せずとも、いつものように振舞ってやる」
「ありがとうございます。期待しております」
「――相変わらず、遠慮のないヤツだ」
 ジナバナは悪びれもせず笑い、一つ礼をして立ち去っていった。


15 名前:2 :2007/06/26(火) 15:26:24.50 ID:oQtTvLM8
 東方の木に咲く花がある。
 気候の変化の乏しいアトルガンとは異なり、暑さ寒さが一定期間で巡ってくる土地。
 その土地で寒さがゆるみ少し暖かくなった頃に咲く花。
 微かに朱鷺色を帯びた白い花はそれ自体も美しく、匂いも芳しい。
 初めて見た折には、らしくなくその美しさに惑ったが、土地の者は笑って言った。

「花は、ただ美しいだけに非ず」

 その言葉の意味を知ったのは、それからしばらく後。
 雨が続く季節のことだった。


16 名前:3 :2007/06/26(火) 15:27:09.85 ID:oQtTvLM8
 厨房に届けられた木箱を持ち込む。強い匂いが一瞬広がった。
 淡い草色をしたアプカルの卵ほどの実がいっぱいにつまっている。
 取り出して一つずつ丁寧に洗う。水を張った桶に放り込む。
「いい匂いがすると思ったら」
 肩口で綺麗に切りそろえられた黒髪の頭が扉の陰から覗いていた。
「風にでも乗っていたか?」
「ええ。とても素敵な匂いが運ばれてきたわ。もうそういう時期なのね」
 笑いながら厨房に入ってくる。
 一つ実をつまみあげて口を寄せ、匂いをゆっくりと味わうようにしている。
「届いたばかりだからな。まだしばらくかかるぞ」
「わかってるわ。まだまだ仕込みの段階でしょう。
 それにもうすぐ振舞われるのは――」
 期待に満ちた眼差しに、苦笑する。
「もう少し待て。これを仕込んだらだ」
「楽しみだわ」
 笑顔でもう一度、実に口付けがされた。


17 名前:4 :2007/06/26(火) 15:30:57.02 ID:oQtTvLM8
 アクを抜いた実を処理し、用意した瓶に詰める。塊の氷砂糖と実を交互に入れていく。
 最後にやはり前もって東方から特注した透明の酒を注ぎ固く瓶の口を締める。
 淡々と作業をして、いつしか瓶詰めが10も出来た。
 後はこれをすべて厨房の床にある貯蔵庫に仕舞うだけだが――
「これはここに仕舞えばいいんだよな?」
 貯蔵庫のところで大きな巨体がすでに扉を持ち上げていた。
「いつの間に……。貴様も鼻がいいな」
「ダビゴに聞いたんだ。お前さんの所に東方から荷が届いたってな。だからそろそろかと思ってな」
 ガハハと大口を開けて笑っている。
「とりあえず、中のヤツを出すんだろ?」
 返事も聞かずに貯蔵庫から、今実を詰めたものと同じ瓶を取り出しはじめた。
 仕舞われていた瓶がすべて出され、同じ数だけの瓶が代わりに仕舞われる。
 去年、同じことをした瓶。透明だった酒は、琥珀色に色づいている。
「相変わらず、美味そうだな」
 大きな片手で軽々と瓶の一つを持っている。こっそり舌なめずりするのを見逃さない。
「開けるなよ」
 睨んでやると、何かを言おうとして飲み込んだ。目が泳いで瓶の方へいく。
「やらんとは言っていないのだが、言わねばならないか?」
「わかったよ。そのかわり、その瓶はオレの分な」
 勝手に権利を主張して、またガハハと大きく笑った。


18 名前:5 :2007/06/26(火) 15:34:56.70 ID:oQtTvLM8
 静かになった厨房で、一人、取り出した瓶を卓に並べる。
 どれの瓶も具合よく色づいた液体をたたえている。
 一つ瓶を開ける。
 柄杓で一杯杯に注ぐ。
 一口含み、口の中で転がすようにする。
 こくのある液体。艶やかな舌触り。
 ほぼ一年の時をかけて熟成された酒。

 東方の国では今の時期に降る雨にこの実の名前を付けている。
 木にたわわに実った実の香りを立てる雨。
 その木の下で雨宿りをすれば、この酒と同じ味が微かにするのかもしれない。

「今年もまた、楽しめそうだ」

 杯をもう一口。
 じっくりと味わうように澄ませた意識に、湿った音が届く。

 アルザビにも雨がやってきていた。


36 名前:>>14-18の続き。 :2007/06/27(水) 10:40:16.83 ID:sB38C9Xl
「今夜はやけに賑やかだったようだな」
 何処かのん気な声が、盛りも過ぎた食堂に入って来た。
「遅いぞ。職務が重要なのもわかるが、飯の時間は守れ。少しも片付かん」
 自分よりだいぶ高いところにある浅黒い顔が、困ったように笑って頷いた。
「それにしても、凄い有様だな。あのような所で大の字になって寝ていては、風邪をひく」
 腹の底から豪快な寝息を吐き出している姿が食堂の隅に転がっている。
 先程まで、にゃーにゃー笑いながら看病のらしきことをしていた姿があったが、今はない。
「放っておけ。アレに限って風邪をひくような殊勝な体に出来ているわけがない」
 突き放すように言うと、何とも言えない顔で顎を撫でた。否定はしないという風情だ。
 多少冷めた料理を目の前に並べてやり、最後に杯を差し出す。普段は用意しない食前酒だ。
 不思議そうに受けとった顔は、杯の中身を悟ると、子供のように破願した。
「ああ、そうか。この時期になったか――これが振舞われては確かに皆盛り上がろう」
 相変わらず厨房の隅に転がったままの姿を見て頷いた。
「今年もまたいい出来だ」
「褒めてもそれ以上は出んぞ。今宵はあくまでも食前酒だ」
「ふむ……食前酒にしては見事に出来上がってるが……」
 寝息にはいびきが混じっている。
「無理に制止してあらかた飲まれるくらいなら、先に一瓶与えておいた方がマシだ」
 笑い声が上がる。確かにな――言いながら杯を飲み干した。


41 名前:>>36の続き。1/2 :2007/06/27(水) 13:57:59.11 ID:sB38C9Xl
 厨房に戻ると作業台の机に突っ伏している姿があった。
 こめかみを解しつつ近寄ると気配を感じたのか、ピンッと尻尾が立つ。
「べつに〜まってなんか〜いないんだからね〜」
 ろれつが回っておらず、脈絡もない。作業台から緩慢に起こした顔は赤い。
「お前も飲みすぎだ……。あの底なしに付き合うからだぞ」
「べつに〜おいしかったわけじゃ〜ないんだから〜」
 発言とは裏腹にとろんと幸せそうに瞳が細まっている。
 そのままむにゃむにゃと何かを言いながら作業台になついてしまった。
 無理に起こすと引っかかれそうなので、とりあえずそのままに片づけをする。
「ねー」
 寝言のような声に振り返ると、赤い顔が再びこちらを向いていた。
「いつものあれはー?」
 宴を引き上げ厨房に早々に引き上げた理由がわかる。心得て酒入りの瓶より小さな瓶を手渡す。
「仕方がないヤツだ。食べ過ぎるなよ」
 嬉しそうにおぼつかない手で瓶を開け中味を口に一つ放り込んだ。
 一瞬ちょっと顔をしかめ、尻尾が立つ。しかしすぐに顔が緩んだ。
 瓶に入れたのは、酒を漬けた後に残った実。それを砂糖水で煮ると甘酸っぱい菓子になる。
 女子供にはこちらがより好評で、既に一瓶は風にのった煮込みの匂いを嗅ぎつけた輩に渡している。
「べつに〜お礼のつもりじゃないけど〜ありがと〜」
 瓶をこれ以上ないほど大切そうに抱えて、酔っ払いはふらふらと尻尾を揺らして立ち去った。


42 名前:2/2(これで終わり) :2007/06/27(水) 14:00:06.34 ID:sB38C9Xl
「今年は少し甘みが強いようですな」
「去年あちらは雨期が長かったようだ。そのせいだろうな」
「確かに運ぶときも香りが強かったように思います。子分たちが随分と気を取られていた」
「その年その年で性質が違う、だから面白い」
「まさに」

 篝火のたかれたアルザビ城壁、掘割。いつもの持ち場。
 見守る自分と、付き人以外は平時から殆ど人が近づかない場所。
 そこに踏み入る者は限られている。今、目の前にいる者と、もう一人――

「おや、はじまってましたか」
「遅いな、ジナバナ。炎蛇将殿の一品はもう粗方飲んでしまったぞ」
「それならば貴方のその頑丈な腹を開いて取り出しますかね、ダビゴ」
「――まだ充分に持ってきてあるから、おとなしく味わって飲め」


 その日のアルザビの夜は、遠く東の国の花の香が満ちているかのようだった――
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